研究概要 |
前年度にひきつづき関連する文献資料の収集を行うとともに、特に本年度は韓国および中国におけるこの問題についての研究動向を把握することに努めた。 1.1997年6月3日〜4日、中国延辺大学で行われたシンポジウムに参加し、研究発表を行った。 2.ソウル大学校・李泰鎮教授編著『日本の大韓帝国強占』(1995年・ソウル)の一部を翻訳した。 3.フランスの国際法学者フランシス・レイ(Francis Rey)の論文「韓国の国際状況」“La Situation Internationaie de la Coree " (Revue Generale D de Droit Inter-national Public 13, 1906)を翻訳した。 4.1907年の「ハ-グ密使」で知られる李相〓の「控告詞」を翻訳し、新資料として利用した。 これらを通じて明らかになったことは、拙著『韓国併合』に対する批判が、歴史資料の解釈の差異によるものだけでなく、歴史認識の理論と方法によることを知った。すなわち、「韓国併合条約等無効論」とよばれる韓国・中国研究者の主張(私見は「合法・不当論」)は、国家支配における合法性と正当性との区別と関連が不明確であるため生じたものと考えられる。したがって、最終年度に当たる次年度には、それらの理論的枠組みを明確にした上で、全体をとりまとめたい、と考えている。
|