本研究は、史料として遺された紙資料群を対象に、材質および特性を明らかにして、科学的類別を行うことにある。そのため、顕微レンズを用いた測定装置(CCD拡大画像)により紙質測定の技術に関する研究を行った。加えて、史料への影響を最小限にとどめた調査により、紙の特質をどこまで把握できるか、紙質画像を入力して比較研究するための準備作業を行った。本年度は、『手漉和紙』を標本として、次の科学的調査と調査技術の検討を行った。(1)顕微レンズを用いた測定装置を用い、紙面にそのレンズを近接させてテレビ画面に写しだし、画像解析ソフトによって画像入力処理を試みた。画像を良質に取り込むため、繊維の長さや交差状態を観察の上、画像に入力し、「繊維表面サンプル」を作成するための手順を試行した。(2)化学パルプと機械パルプの混入を識別するため、フロログレシン(JIS P8120による)による呈色反応を行う方法について調査を行った。(3)標本より採取した試料をもとにC染色法による紙の繊維試験を行う。わら・亜麻・楮・三椏・雁皮などの紙原料の呈色状況により識別するため、C染色法に関する検査技術を調査した。(4)地色の違いを視覚的に判断するのを数値に置き換えるため、各種メーカーの色差計の精度について調査研究を行った。特に、白色度・黄色度の測定値について考察した。(5)紙の水分量を紙水分計による測定技術について調査を行った。紙表面の導電性を水分量のデータとする分析方法について検討を加えた。(6)pHメータにより紙の酸性度を測定する方法について各種機器を調査した。(7)紙の製造年月日のあるものは、経年数を計算した。以上の科学的調査を調書としてまとめるため、データシートのフォームを整理した。これらのデータをパソコンを使用して入力し、処理する作業を併せて行った。今後、測定結果から紙質の特定パターンを整理した「紙質類別基準試案」の作成に向けた分析研究を実施していく。
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