本研究は、史料として遺された紙資料群を対象に、材質および特性を明らかにして、科学的類別を行うことにある。そのため、顕微レンズを用いた測定装置(CCD拡大画像)により紙質測定の技術に関する研究、加えて、史料への影響を最小限にとどめた調査により、紙の特質をどこまで把握できるか、紙質画像を入力して比較する研究を継続して行った。平成8年度は『手漉和紙』を標本として、各種の科学的調査と調査技術の検討を行ったが、平成9年度は実際の史料に用いられた資料群の科学的類別のための調査を、新潟県長岡市深沢の高頭家文書(庄屋文書 江戸・明治期 約5000点)を対象として開始した。高頭家文書の類別においては、新潟県内の江戸期の和紙「小国紙」「伊沢紙」の識別を可能とするデータを得ることができた。 調査内容は、史料を非破壊的に分析することを原則とし、劣化状態調査の作成、和紙原型寸法の計測から開始し、顕微レンズを用いた測定装置を用い、紙面にそのレンズを近接させてテレビ画面に写しだし、画像解析ソフトによって画像入力処理を試み、表面画像の特徴を三次元で捉えることに成功した。画像を良質に取り込むため、繊維の長さや交差状態を観察の上、画像に入力し、「高頭家文書繊維表面サンプル」を作成するための手順をとりまとめ、成果報告書にまとめた。 科学的調査を調書としてまとめるため、データシートのフォームを整理し、データをパソコンを使用して入力し、処理する作業を終了した。 測定結果から紙質の特定パターンを整理し、データの累積と分析によって「紙質類別基準試案」を作成し、成果報告書にまとめた。
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