本研究の目的は、近代オスマン海運の形成過程を分析することにより、オスマン帝国の資本主義的世界経済への従属的包摂にともなういくつかの問題点を明らかにすることである。具体的には、(1)海軍の商業海運への関与、(2)海運の自立を阻んだ外国汽船との競合、(3)海運事業をめぐるムスリム・トルコ系軍人・官僚と非ムスリム系資本家・官僚との対立、の3点に的を絞っている。 本年度は、まず、上記(1)・(2)に関連してこれまでに収集した内外の史料にもとづいて、1997年5月11日第13回日本中東学会において「19世紀のオスマン海運-黒海航路をめぐって-」と題して研究発表を行った。その内容は、黒海航路での外国船との競合問題をとりあげ、英国外交文書(領事報告書)にみる19世紀の黒海海運の動向と汽船航路の開設・発展のプロセスを分析することによって、この航路の特性を明らかにしたものである。 つづいて上記の研究発表でも利用したが、これまでに収集した英国Public Record Office所蔵の外交文書、議会文書、Maritime Museumの海運関係文書の中から摘出した黒海航路に関する史料をベータ・ベース化し、史料集として公表した。 また、この史料集にもとづいて、黒海航路における英国汽船の活動の分析とその位置づけを行い、オスマン海運に及ぼした影響を考察した論文を同時に発表した(「オスマン帝国末期の英国黒海汽船海運-『英国領事報告書』より-」『歴史人類』第26号1998年3月)。さらに英国以外の諸外国汽船も含めた19世紀から20世紀初頭にかけての黒海海運全体の動向についての論文も近く公表する予定である。
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