本年度は特に広東広州・潮洲における生産・流通・土地所有構造及び華南における米穀需給・流通構造に関する論文の作成をめざし、研究情報、研究資料を収集し、分析した。 具体的には、4月〜6月には本学図書館を通じて『明代倭寇関係史料』、『台湾時報』、『中山大学学報』、『福建師範大学学報』等の文献より関係史料を入手し、7月には設備備品費を用いて『中国方志叢書広東省(第2期)』(成文出版社)161〜185を購入し、また同月には外国旅費を用いて台湾に出張し、台湾大学、台湾師範大学の研究者よりレビューを受けた。そして、10月には国内旅費を用いて大分大学経済学研究所に赴き、『台湾事情』等の文献より関係史料を入手した。 10月から3月までは以上の研究情報、収集資料を分析した。その結果、明代15世紀中頃、後期倭寇の活動がさかんであった時期に、安徽の官僚=商人=倭寇勢力と並んで福建の官僚=商人=倭寇勢力が台頭し、この福建勢力が福建、広東、台湾、日本、東南アジアの商品流通を担った。明末清初より、広東広州・潮州地域の官僚=商人=倭寇勢力も台頭し、やがて鄭芝龍・成功父子によってこの福建と広東両勢力が傘下に収められた。鄭氏によって華南地域開発、商品流通が運営されたが、17世紀後半に清朝によって鄭氏が降伏したために、以後は、清末まで福建勢力と広東勢力が華南地域の開発、米穀生産、商品流通をめぐって対立していたことが明らかとなった。 この分析結果をもとに広東広州・満州における生産・流通・土地所有構造及び華南における米穀需給・流通構造に関する論文を現在作成中である。
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