研究概要 |
1.大英図書館所蔵分のニヤ出土カロシュティー木簡のうち,楔型木簡と矩形木簡で,完全な形で残っており,人物名(特に王の名前)が様式上整っているもの,また年・月・日が記されているものを,文字資料データとして入力した。楔型木簡は、kila-mudraと文書中では呼ばれており、王による審議命令書としての性格をもつものであることがはっきりした。なぜこの形を採るかについても、仮説を立てることができた。矩形木簡の方は,土地や家畜の所有権をめぐる争いに対する判決命令書であることが多いが、契約文書の場合もあった。 2.スタインの中央アジア発掘調査報告書であるSerindiaほかに載せられている木簡についてスキャナーによる画像入力を行った。 3.本研究が目指すのは,3次元情報も含めた木簡の形態データベースの作成と,文字データベースの作成の両方であるが,前者については,機材の面からも技術の点からも改善すべきところが多く、今年度は模索段階でおわった。 4.先に楔型木簡と矩形木簡については文字テキスト・データベースを作成したことを述べたが、これを活用して,木簡に見られるインド的影響-王権,税制,土地制度など-について分析した。この分析との関連で,インド古代の法典類に見られる当時の人々の社会観念についての研究を行い,その成果を発表した。カロシュティー木簡についてはインド的なものの影響は顕著である。
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