研究概要 |
1.ニヤ出土カロシュティー木簡(大英図書館所蔵分と、デリー国立博物館所蔵分の一部)のうち,楔型木簡について,その形態の細部の差異に基づいてそれらをひとまず5種類に分類し,それらの形態の相異が,出土地点・人物名・時期・書体などと相関関係を有するものであるかどうかを検討した。ある程度の相関関係が確定されれば,カロシュティー木簡のそれぞれの時期を確定でき,時系列に従って分類できるのではと考えたからである。しかし有意な相関関係を見出すことは今のところできていない。 2.デリー国立博物館所蔵分のカロシュティー木簡の一部について写真撮影を許可され,画像データ化した。しかし種々の制約があったため,文字情報の取り込みには有効であったものの,形態や木質については,現在のところ目視によるスケッチのほうがはるかに情報量が多いので,これをデータ化している。 3.佛教大学で開催された国際シンポジウムに出席し,ニヤ出土カロシュティー木簡研究の現状と今後の課題について報告した。その際,新たに発掘されたニヤ遺跡出土のカロシュティー木簡の現物の調査を行った。形態,内容ともに従来のものと一致するが,新たな王名を記載するものが一点あり,この地域の歴史の一層の解明が予想される。 4.最終年度においては,全木簡を日本語に翻訳した上で,先に作成した文字テキスト・データベースとこれを融合し,さらにこれに形態・文字形・現状などの各種のデータを書き込んだ総合的なデータベースを作成する。これを利用して,カロシュティー木簡におけるインド的なものの影響を明らかにすることを目指す。
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