本研究は中国遊戯史の通史的解明を目指して企画された.本研究者はすでに関連する分野において三編の論文を発表し古代史部分はほぼ完了しているが以上の成果を継承しつつ本年度においてはもっぱら中世史部分を主たる研究対象としその成果を裏面記載の二編の論文にまとめることができた.第一論文においては史上空前絶後の賭博全盛期であった中世(三国六朝時代)の状況を明らかにした.遊戯およびそれを道具とした賭博は広く庶民をもまきこんで盛行したが とくに時代の主役であった貴族階級において社交上の嗜み.必須の教養.技芸とみなされていたこと.それは人々が個性的に.当時の用語でいえば「奇」あるいは「異」に生きることが推奨され 多芸多能であることに価値が生じた時代の産物であることなどを説明した.第二論文は囲碁もまた雅遊と認められ古代以来引きつづいて隆盛であったがこれもまた屡々賭博の具となるのをまぬがれなかったこと.この時期に現行の基盤のかたちが整ったことなどを明らかにした.以上の成果のほか 近世・近代史部分の研究にも着手し購入した「古今図書集成」芸術典・博戯部を中心に正史から随筆類におよぶ広範な史料蒐集を行いつつある.また「中国美術全集」の絵画編・彫塑編には関係の図版が多数おさめられ文献史料を補強していることを附記しておきたい.
|