本研究は3000年という永い歴史をもつ中国の遊戯について通史的叙述を試みることを目的とする.勝負を争う遊戯が屡々賭博に転化するのにかんがみ考察は賭博をも視野にいれて行われる.二年間の成果として論文三編と著書一冊をえたが研究概要は以下のとおりである.まず第一論文においては中世(南北朝時代)の主役を演じた士人(貴族)の間で社交としての意義を含めて囲碁と陸博をもってする賭博が盛大に行われ空前絶後の賭博合盛時代が出現したことを明らかにした.第二論文はもっぱら囲碁を扱い中世とよばれる時代がその成立の歴史に重要な位置を占めることを指摘し高級優雅な遊戯と認められる一方、賭博の手段であった事実に言及している.第三論文は近世、具体的には明末清初16〜17世紀を生きた一人の市隠の生涯を描写しているが彼の生活にも博奕・樗蒲がかゝわりをもつことを明らかにしている.本研究の成果は以上のように要約できるが通史的研究としてはなお未完成であり、とくに近世部分の手薄さは否定できない.したがってこの欠落をうずめ通史的叙述という所期の目的を達成するために研究はなお今後もつゞけられるべきである.
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