今年度は、研究対象である基本史料プスコフ裁判法の分析について、提出した研究計画にあげた手順のうち以下のような作業を行った。 (1)プスコフ裁判法の刊行史料および研究文献のうち基礎的な部分については入手し、テキスト全文(全条項)をカード形データベースソフトを用いてコンピュータに入力する作業を行いほぼ完了した。 (2)テキストに関する先行研究者らの研究のサ-ヴェイに着手した。特にL.チェレブニン、G.ヴェルナドスキー、I.マルトィセヴィチ、A.ジミンによる研究を検討中である。これまでに、これら4人によるテキストの現代語訳を日本語に翻訳する作業、及びそれをデータベースに入力する作業を終了した。 (3)上記4人の研究と解釈を比較検討した現段階での研究代表者による解釈を、第一次的な試訳(ドラフト)の形で作成し、先のデータベースに入力した。これについては今後も改善し改訂してゆくことになる。条文ごとのコメンタールの作成は未完成である。 (4)これらに作業に平行して、プスコフ裁判法を生み出した社会の歴史的理解を得るためにプスコフ史の政治史の研究を行い、特に14世紀1330年代のプスコフとノヴゴロドの関係史に関する論文(露文)を作成した。この論文はまだ未刊行であるが、ロシアのノヴゴロド史家ヤニン教授の記念論文集に収録される予定である。
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