平成8-9年度2年間にわたるプスコフ裁判法およびノヴゴロド裁判法の研究において得た主な成果は以下の通りである。 (1)当該研究の基本史料であるプスコフ裁判法のテキスト、その逐条ごとの現代語訳3種類(V.L.チェレブニンとA.A.ジミンによる露訳2種類とG.ヴェルナドスキーによる英訳1種類)およびそれぞれの邦語訳をデータベース化し、さらにプスコフ裁判法のテキスト中に出現する語彙のインデックスを作成するなどして、今後予定されている種々な側面からの研究にも役立つ資料上の基盤を作成した。 (2)プスコフ裁判法に関する先行研究者、L.V.チェレブニン、G.ヴェルナドスキー、I.D.マルトィセヴィチ、A.A.ジミン、Yu.G.アレクセエフらの研究を検討し、写本、条項区分、成立年代、構成と編纂過程など、プスコフ裁判法を史料として利用する場合の前提条件となるテキスト学的な基礎的諸問題を明らかにした。 (3)ノヴゴロド裁判法の残存部分とプスコフ裁判法を比較しつつ、両都市国家の裁判の形態と特質を明らかにするとともに、両都市に共通する.(A)公と都市共同体代表者との共同裁判、(B)ノヴゴロド大主教およびその代官による教会裁判、(C)都市共同体による裁判の3形態について両都市を比較し、その共通性と差異性について検討した。 (4)上記(1)(2)(3)に示した結果の主要部分は、『ブスコフ裁判法研究ノート』(平成8・9年度科学研究費補助金(基盤研究(C)(2)研究成果報告書)にまとめた。またこれと平行してプスコフとノヴゴロドの関係史に関する研究も行い、1330年代の政治史に関する論文(露文)をまとめてモスクワ大学歴史学部教授V.L.ヤニン氏の記念論文集(未刊行)に寄稿した。
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