平成8年度科学研究費補助金「記念祷設定簿にもとづく中世パリ大学と学寮の社会史的研究」は二年度継続して補助金を交付されるが、一年目にあたる今年度は、中世パリ大学のもっとも重要な学寮である「ソルボンヌ学寮」(College de la Sorbinne)の「記念祷設定簿」(Obituaire)に記載されている人物に関する情報-出身地、出身階層、社会的地位、役職、さらには「記念祷設定簿」に記載される(永代供養を享受する)にさいして、当該人物が設定(寄進)した財をなど-を分析した。 これまでの研究成果を次のようにまとめることができる (1)ソルボンヌ学寮の「記念祷設定簿」に記載された人物は、かつてソルボンヌ学寮で大学生活を送った者が中心を占める。それ以外に、ソルボンヌ学寮の創立期に書籍の寄付などを通して学寮を支援した人物(フランス王を含む)などがいる。 (2)社会的経歴については、教会関係者が大多数を占める。 (3)設定簿記載の人物の出身地については、北フランス出身者がもっとも多い。 (4)記念祷を設定するために提供された財については、金銭がもっとも一般的である。しかし、それ以外に、家屋の寄進、レントの寄進も少数だが見受けられる。 (5)さらに、記念祷の設定の財として書籍を提供する者も複数いる。これは学寮の性格を強く示している。 今後、これらの研究成果と他のパリ大学の学寮の記念祷設定簿の記載内容の分析結果との比較検討を行う。
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