ローマ社会で活躍した教師や医師たちの多くは、奴隷あるいは奴隷出身者であった。そして、精神に関わる教師と身体に関わる医師たちとが、同じ組合に所属していたことも知られている。奴隷のための学校が存在しなかった社会で、どうして奴隷たちが学識や技能を獲得していったのか?奴隷の職業教育を検討した。 すでに論文「ローマの女医・助産婦」でも言及したが、間違いなく、奴隷の女医も助産婦も実在した。なぜ彼女たちが女医や助産婦の職業に就く以前に、なぜ奴隷たちがそのような職業訓練を受けることができたのか? 最大の疑問は、誰が、なぜその教育を担当したのか?そのような職業教育を受けた奴隷たちの動機を推測することはできても、教育を授けた人物の動機は簡単には納得できないだろう。どのような利益があったのか? 多くの教師や医師たちが捨て子であったことを考えると、捨て子を拾って、育て、教育をしていく人の論理を理解しなければならないだろう。いかなる経済的な利益があったのか? 本年度は、膨大な情報を整理するために、新たなパソコンおよび関連機器を設置し、すでに入手していた文献に加えて、新たに収集した研究図書を検討し、その成果を入力した。また、研究文献目録などのCD-ROMを購入した。現在取り組んでいるのが、多くの碑文の中から必要な情報を集める作業である。謝金のほとんどは、パソコン入力のために必要だった。
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