研究概要 |
今年度は、主として、第一次世界大戦後のイギリス資本輸出とインド鉄道に関する研究書及び史料の収集につとめてきたが、前者に関しSTOCK EXCHANGE OFFICIAL INTELLIGENCE,1889-1933を入手し、また後者に関しては国内外の議会史料を中心に収集し、従来入手できなかった史料を確保し、それらの検討に入ることができた。 他方、第一次世界大戦後のイギリス帝国の再編過程を問題にするに当たり、インド鉄道投資政策に焦点をあてて、鉄道建設(資本輸出)とインド財政の均衡(元利の保全)の対抗という視角から、研究史を整理した結果、(1)日本において20世紀以降のインド鉄道史研究はほとんど存在しないこと、(2)海外の研究は鉄道固有の問題として扱っているものが多く、イギリス帝国の再編との関わりが希薄になっていることを明らかにできた。そのためにイギリスを中心とした多角的貿易構造の再編、パックス・ブリタニカからパックス・アメリカ-ナへのヘゲモニ-転換においてインドがいかなる位置に置かれつつあったか、新たな視点から注目すべきであることを確認した。 ところで、戦後のインド鉄道史上転換点をなす1920-21年のインド鉄道調査特別委員会(通称アクワ-ス委員会)の報告書並びに議事録(全5巻)を中心に、今回入手したロンドン金融市場の資料をも検討して、大戦中から大戦後にかけてのインド鉄道を取り巻く諸問題を明らかにしつつ、当該委員会のおける現状認識と政策志向を究明した。今後イギリスの投資・金融利害、イギリス政府(インド省)、インド政庁、インド国内の商業会議所などについても網羅的に究明するつもりである。
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