既に報告されている日本各地の遺跡出土動物遺存体の分析データのコンピュータ登録を実施するとともに、加計学園・岡山理科大学として調査した岡山市津島東朝寝鼻貝塚出土資料のデータ分析を行い、遺存体データベースの拡充を図った。 データ化に際しては、従来使用していた1ページ30点並記表型レコーディングシートを変更し、1レコード1ページ型のカード方式とした。さらにカードデータのコンピュータ処理ではマッキントッシュ社パワーマックをオペレーションシステムとして利用し、数値型・非数値型・画像データを一括して集約した。 データ化した資料は、北海道札幌市、本州域ほぼ全般の遺跡のうち筆者が資料分析を実施した50遺跡に及んだ。さらに、多数の機関・個人の御協力を得て、貴重な現生標本300点や近世の絶滅動物類を入手・観察しデータ化した。 これらの研究を通して、東北地方のイノシシ類は縄文から弥生時代にかけて変質している可能性や、縄文と弥生時代では文化システムにも根付いている解体・加工方法が変質している可能性、イノシシ類狩猟やキービングに関して縄文時代後期に画期がみられる等の諸点が指摘された。 最終的な結論として、東北地方の弥生文化を辺境の所産とみる地理的先入観を破棄し、内在する主体性を高く評価するべきであるとの管見が得られた。
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