本研究は、日本統治時代のミクロネシアから持ち帰られ、日本の研究機関に所蔵されている考古遺物の資料調査を行い、その結果を英文で刊行することを目的としている。本年度は資料調査にあて、東京大学総合研究博物館および国立民族学博物館にて、所蔵遺物のカタログ化、実測図の作製、写真撮影、調査に関する文献調査などを行った。これらは、東京大学の長谷部言人、八幡一郎、松村瞭などの考古学および人類学研究社が、昭和初期にミクロネシアの島々で数回にわたって学術調査を行ったとき、発掘、表面採集、あるいは民族標本として採集されたものである。 東京大学総合研究博物館には、石斧、貝斧、貝製装身具、貝製釣り針、珊瑚製品など約370点の収蔵されており、採集地はマリアナ諸島、チューク、ポーンペイ、コシャエであった。とくに、ナンマタールおよびレレ巨石遺跡からの発掘品は、貴重である。国立民族学博物館には、貝製装身具約10点の遺物(やはりナンマタールおよびレレ遺跡出土の装身具)が収蔵されており、これれの計測および写真撮影を行った。現在、これらの資料をデータベースへ入力する作業を進めており、助成2年目にあたる平成9年度に刊行を予定している英文資料集の基礎データにする予定である。 これら、日本所蔵のミクロネシアの遺物に関する諸外国の関心は高く、とくに各島に設置されている文化財保護委員会からは、この研究成果の公表方法に関しての問い合わせがすでによせられている。
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