弥生時代青銅器の産地推定の方法として、鉛同位体比法および化学組成を利用した。弥生時代青銅器を構成している金属は一般に銅-スズ-鉛を主成分とした合金であり、これら原料である青銅合金の化学組成や鉛同位体比は弥生時代の中の細かい時代区分でも日本への供給産地の違いによって、異なることが分かっている。本方法を各種青銅器に応用し、考古学的な編年とを組み合わせて、弥生時代における社会構造や交流などの具体的な内容を理解しようとした。 本年度は試料の採取、および鉛同位体比の測定を主体的に進めた。弥生時代青銅器として神戸市立博物館所蔵の銅鐸など約30点、北九州市考古博物館所蔵の銅矛、銅鏡など30点、東京国立博物館所蔵の対馬、福岡県などから出土した銅矛など約30点、石川県の小銅鐸、群馬県の小銅鐸など約10点の鉛同位体比を測定した。これら100点以上の試料に関して、考古学的にどのような意義があるかを検討中である。試料収集と測定は順調に進められている。各博物館の考古担当の学芸員および研究者が好意的に試料採取に協力してくれ、また試料に関する考古学的な知見を討論してくれた。このため、考古学的な記載と、自然科学的な数値との意義付けがはっきりしてきた。その他試料の鉛同位体比測定および、幾つかの試料に関しては化学組成の測定を来年度に予定しており、来年度の報告書としてまとめる予定である。 文化財保存修復学会19回大会口頭発表「鉛同位体比法を用いた小銅鐸の材料に関する一考察」 日本文化財科学会14回大会口頭発表「対馬出土広形銅矛の鉛同位体比」
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