弥生時代青銅器を構成している金属は一般に、銅-スズ-鉛を主成分とした合金であり、産地によって、また青銅器の型式によって、系統的に元素組成が異なる。また鉛の同位体比も青銅の供給地の違いによって、異なることが分かっている。それ故、本研究では弥生時代に用いられた各種青銅器を化学組成や鉛同位体比という側面から調査することから、弥生時代に於ける青銅の流通や人間の交流あるいは社会構造などについて理解しようとした。 本研究においては弥生時代および関連した時代の青銅資料に関して、資料の採取および自然科学的な測定を進めた。 昨年度、弥生時代青銅器として神戸市立博物館所蔵の銅鐸などを主として約100点の試料に関して鉛同位体比を測定した。本年度はこれらに関して考察を進め、考古学的にも矛盾の少ない結論をまとめた。新たな資料として、神戸市立博物館から銅鐸・銅戈の修復時に採取された錆を約50点提供していただいた。これらの資料から、当時の資料の並びかたや資料相互の汚染環境などに関する情報が得られる可能性がある。また日本産の資料として、平安時代の経筒など50点の資料、地方教育委員会が所蔵する資料約30点に関して、測定を進めた。これら100点以上の資料に関して、考古学的にどのような意義があるかを検討中である。
|