研究概要 |
(i)中世瓦の年代の細分については,全国共通で,I期(1180〜1210)、II期(1210〜1260)、III期(1260〜1300)、IV期(1300〜1333)、V期(1333〜1380)、VI期(1380〜1430)、VII期(1430〜1500)、VIII期(1500〜1575)の8期に編年した。これを大和の瓦で製作技法の差から把握すると、I期は軒平瓦に凹型台の圧痕がない時期、II期は軒平瓦に凹型台の圧痕が出現し、顎はりつけか折り曲げで製作される時期、III期は瓦当はりつけで製作され、瓦当裏面にタテケズリの痕跡を残すものが三分の一程度存在し、丸瓦部では布袋に対する吊り紐の縫い方が表裏比率1:1の時期である。IV期からV期の80年間は,吊り紐の表裏比率から15年程度の単位で、年代をさらに細分できる。IV期の軒平瓦の瓦当裏面はヨコナデ調整によって仕上げ、V期の軒平瓦には顎部後縁に面とりが出現する。VI期以降の丸瓦部の吊り紐はすべて表に出る。 (ii)同笵関係を大きく分けると瓦が運ばれたものと、瓦工人が出張製作したものがある。I期の東大寺・東寺の瓦は備前・播磨から運ばれ、I期の鎌倉の瓦は尾張・伊豆・京都・武蔵から運ばれている。また和泉産の瓦が、京都・鎌倉に運ばれている。瓦工人が出張製作したものとして大和の瓦工の尾道(浄土寺)・播磨(円教寺)・紀伊(根来寺)・河内(竜泉寺)での製作例などを明らかにした。 (iii)近畿では京都系・大阪(摂津・和泉)系・大和系の三者が独自性をもち、播磨・紀伊・河内ではこの三者の系統が地域によって交錯した状況を示す。関東も同様で、鎌倉的なものをのぞくと、武蔵系・上野下野系・常陸系に分かれ、それぞれは近畿の大阪系・京都系・大和系に対応するが、時期によっては他系統へ移るものがある。
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