研究概要 |
1.大量に出土したテル・マストゥーマの土器や土製品,石製品,金属製品,骨製品の中で看過されていた遺物の図像化作業を二年度にわたり行い,比較資料の作成はほぼ終了した。 2.作成された実測図や写真は出土データ,観察所見とともにコンピュータ入力(MO230)し,整理・分類を行った。比較的早くまとまったアシュタルテの分類試案,石製容器,鉄製品などが原稿化された。鉄製品の分析結果の一部が公表され,いずれも鋼製鉄器に分類されるが鎌刃には亜共析鋼が使われていた。テル・マストゥーマ出土の鋼製鉄器の組成分析により,粗鉄を素材とした鋼製造と鉄器製作法を受け継いでいることが明らかとなった。 3.テル・マストゥーマの青銅器時代から鉄器時代までの14の文化層に,これまで部分的に検出されていたが未報告であったアケメネス朝ペルシャの支配時代(0層)をマストゥーマ編年の骨格に加え考察を行った。鉄器時代には貯蔵用の大甕の出土率が80%を超える部屋が過半数であったが,ペルシャ時代では貯蔵・運搬用の長胴瓶に変わり,この時代特有のアシュタルテ,ホ-スマンと呼んでいる土偶が共伴する。テル・マストゥーマ出土のホ-スマンは破片を含めて101点確認し,2種類に大別できた。人物の顔が型押し成形されたタイプ2はアケメネス朝支配下の西アジア全域で類例が見出された。 4.本研究によって得られた新たな知見は研究成果がまとまり次第,逐次公表していく予定である。西アジアや欧米の研究機関と定期刊行物の交換がある「古代オリエント博物館研究紀要」をはじめ,一般向け情報誌「ORIENTE」などにはその概要を掲載していきたい。
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