研究概要 |
今年度は,沖縄諸島の北西部に位置する伊江島の6-8世紀の砂丘遺跡であるナガラ原東貝塚の発掘調査,及び琉球列島と関連の深い台湾に貝塚の立地とその出土貝類種組成の検討打ち合わせを行った. その結果,伊江島のナガラ原東貝塚からは,食用の貝類として,リュウキュウヒバリガイやミドリアオリガイといったサンゴ礁の岸側潮間帯下部に生息する中形の貝類が中心となっていることが明かとなった.この組成は,この島における弥生時代相当期の貝塚からのシャコガイ類やチョウセンサザエ・サラサバテイラといったリーフ上や礁斜面の大形の貝類が多いことと対象的であった.これらは,2つの時代の間の社会形態の相違に起因すると考えられた.ただ,遺跡が砂丘に立地することによると考えられるが,出土した貝類からは,水田に生息するマルタニシが出土せず,水田農耕が存在していなかった可能性が高いと出土した貝類から考えられた, 微小な陸産貝類の層別の種組成及び量的組成の変化から,下部・中部・上部(攪乱)と3つの周辺環境の復元が行えた.いずれも,海浜植生が中心であるが,今回の6-8世紀の文化層の時代には,最も開けていたと考えられた. 台湾における貝塚の立地は,基本的に山裾に立地していることが再認識された.その組成は,北部西岸ではシジミ類を中心とし,中部西岸ではマガキが卓越し,南部西岸ではマングローブ林の種が多いことが確認された.ただ,遺跡自体や南部西岸のマングローブ林は,極最近の台湾の発達により,人家,埋め立て地等となり,再調査の困難なことも確認できた.
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