今回の研究では、「貝類からみた南西諸島の環境考古学」では、貝類の生息場所の把握、貝類の推定、非食用貝類の出土様式、食用貝類の摂食様式など、様々な問題が存在する。そこで、今回は、まず、この地域の様々な時代の遺跡出土の貝類遺体を明確に記載し、さらに、1)遺跡周辺の自然環境、2)南島における水田稲作開始時に関する貝類学的検討、3)貝製品の素材採集に関する検討を加味しながら、進めていくこととした。 その結果は、下記の通りである。 1)遺跡周辺の自然環境:弥生時代から古代相当期の亜熱帯の砂丘遺跡でも微小な陸産貝類を用いることによって、遺跡周辺の自然環境を復元することに成功した。つまり、遺跡の各層準から多くの個体と種が得られ、陸産貝類各種の現在の生息場所から、過去の自然環境の変遷を示すことができた。 2)南島における水田稲作開始時期:水田に生息するマルタニシの出土から、弥生時代から古代相当期には本種の出土は確認されず、12世紀以降のグスク時代になってから初めて確認され、開始時期はこの時代であると考えられた。 3)貝製品の素材採集:ゴホウラやヤコウガイ・オオツタノハ等の貝製品の素材採集には遺跡の立地が大きくかかわっていることを明らかにした。
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