本研究の調査課題とする資料ジャンルの内、最も用例の多く拾われるのは、イ:文書類、ロ:記録類、の二方面である。これらについては、目下、次のような点(分野、資料)を集中的に調査・分析中である。 イ:文書類 上代新出の平城宮跡出土木簡、特に、長屋王邸宅跡出土木簡 ロ:記録類 (1)吏部王記 (2)泰重卿記 (3)兼見卿記 (4)実隆公記 (5)山科家礼記 前者は、日本における助数詞の用法の内、その初期の様相を探ろうとするものである。 後者は、これらのみにおいても多くの実際例を得ようとするものであるが、もう一つ、先に行った「中世、また、近世の辞書類における助数詞の調査」の不備を補おうとするものである。 辞書類には、多くの助数詞が収録されている。しかし、その実際の用法ははっきりしないことがあり、時には、それが助数詞であるか否かの決め手を欠くことさえある。 記録類の内、(4)『山科家礼記』は、一家司の手になる日記であるが、大部なものであり、これによって、「当時における、一個人の使用し得る助数詞(異なり語)」についての考察が可能ではないかと思う。カード採取は終わったので、これから分類・考察を行いたい。 以上のほか、現今、次のような調査を終え、または、調査中であり、 (a)日本書紀・北野本(訓点) (b)今昔物語集 (c)近世の料理書 さらに、「韓国語」「タイ語」「マレーシア語」「カンボジア語」における助数詞「類別語」のあり方について検討中である。日本語の助数詞を真に理解するには、「中国語(古代〜現代)」はもとより、こうした近隣諸語における助数詞(類別語)の検討も不可欠であろう。
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