当該研究期間の研究成果は次の通りである。 1 各時代、各文章ジャンル、各資料などにおける助数詞表現の検討と用例の収集を、時間の許す限り行った。それらは、(1)古文書、(2)古記録、(3)訓点資料、(4)表白集、(5)古往来、(6)文学作品、(7)教科書、(8)辞書、の広い分野に渡っている。それぞれにおける実態調査は、共時的研究・通時的研究のいずれにおいても基礎となるものである。 2 日本語助数詞の歴史的展開の把握、また、その展開の必然性についての考察:この代表的な事例として、日本の鷹狩り文化に関する「鷹」の助数詞について歴史的考察を行った。今後には、衣類、魚介類、等々、分野ごとに、また、対象ごとに、細かく検討していきたい。 3 中世から近世における故実書・書札礼・節用集の検討過程において、これらの時期には、助数詞は文書類(簿籍、証書、手紙、その他)の作成には不可欠の存在であることが判明した。その用法の習得こそは、文章作成者に必須とされた教養でもあり技術でもあったのである。 4 日本語の助数詞と、中国・その他における助数詞相当語(類別語・量詞)との比較研究:漢代前後から唐代にかけての、西北辺境遺跡出土の簡牘類、墓葬出土の簡牘類を調査し、多くの量詞(助数詞相当)の用例を得た。 また、タイ語、ラオス語、マレーシア語、カンボジア語、ベトナム語、インドネシア語など東南アジアにおける類別語(助数詞相当)を調査し、その根底にある類別の原理について考察中である。 5 現代の新聞における助数詞を調査した。ここでは伝統的な助数詞表現の豊かさは斟酌されず、簡易化され過ぎている憾みがある。 6 島根県における方言生活の中の助数詞について考察した。
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