研究概要 |
本研究は、臨時一語(文および文章をつくる際に,その場で臨時的に作られる合成語)がどのように作られるかを,文章におけるその使用実態から明らかにすることを目的とする。具体的には,一つの文章において臨時一語はどのようなところに現れるのか,臨時一語は文章を組み立てる上でどのような役割を担っているのか,臨時一語は文章を組み立てる際に用いられる他の手段や材料(たとえば指示代名詞など)とどのような関係にあるのか,などの諸点を,とくに臨時一語のもとになった単語連続とのかかわりにおいて考察し,臨時一語の構成に関与する文章上の諸特徴とその枠組みを見出すことを目指す。 本年度の成果は,以下のとおり。 1.社会科学・自然科学関係の一般向け啓蒙書およそ50編を対象として,文章構成とのかかわりが認められる臨時一語と,それを含む文章表現とを選び出し,データ化した。 2.上記データをもとに,ある単語連続が先行し,それに後続して,その単語連続を臨時一語化する,という事例,すなわち,syntagmaticな臨時一語化と呼ぶべき現象のあることを見出した。 3.syntagmaticな臨時一語化について,それが,一文内から数多くの段落を隔てた範囲までさまざまなスケールで生じること,臨時一語化の対象となる先行表現(単語連続)には,連語から連文に至るまで,さまざまなものがあること,それらの先行表現を臨時一語にまとめる方法(語形成法)にもさまざまなものがあることを明らかにした。
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