本研究の目的は、三條西実隆とその生涯を通しての文芸活動とを総合的に研究するための基礎的な文献資料を整理することである。実隆の文芸活動は広汎に亙っているが、今回の研究対象は、和歌および連歌活動とした。 本研究の期間は、平成8〜10年度の3カ年間である。平成8年度は、実隆の家集として最も整備された『雪玉集』の伝本調査と資料収集を行った。寛文10(1670)年板行の『雪玉集』は基礎文献ではあるが、その本文は、流伝間に発生した誤写や脱落の存する写本を底本に採ったためか、疑問点や不備な本文内容をそのまま踏襲した箇所も少なくない。それ故、『雪玉集』自体の版本・写本調査よりも、『雪玉集』の版行以前、即ち永正年間から寛文10年までの約150年間に書写された伝本調査に重点を置いた。その主なものは『聴雪集』『遥雪集』『逍遥院百首』『実隆百首』『逍遥院詠藻』等であり、他に『雪玉集』の成立に深い関係がある『一人三臣抄』『続撰吟抄』等の諸本調査も行った。平成9年度は、前半は8年度の継続で、和歌の諸本調査と資料収集とを行った。後半は、連歌に重点を置き、主に実隆が参加した千句連歌および千句連歌残闕、百韻・和漢連句の調査と資料収集とを行った。併せて実隆自筆の文献資料および関連資料の調査・収集をも行った。その結果、和歌では都合53本の調査と資料収集とを成し得た。また、連歌では、実隆の独吟・両吟・三吟の百韻を初め、和漢連句や連歌残闕として、都合77篇の調査と資料収集とを成し得た。 平成10年度は、時間的な制約があるので、実隆の連歌活動の事績に限定しての整理を行った。千句連歌および千句連歌残闕の事績は、昭和63年刊行の『三條西実隆集』に収録した。今回は、百韻・和漢連句を中心とした事績を単行本として刊行の予定である。本報告は、その一部分の「本文翻刻と解説」を公表するものである。
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