研究概要 |
1,春藤家および下掛かり宝生家の系図類の調査と整理を行った。今年度は新たに発見した新資料はなかったので、今までに確認し得た系図類を写真等で収集し、相互に比較して検討を加えた。来年度には、さらに新資料の発掘に努めると共に、両家の家系を確定したい。 2,春藤家や下掛かり宝生家と関係の深い能楽師を訪問し、春藤流や下掛かり宝生流にかかわる江戸時代の資料を調査し、あわせて、聞き取り調査を行った。その結果、幕末から明治にかけての貴重な資料や情報を得たが、本研究のテーマに関してはさほど得るところがなかった。来年度は、以上の調査で名前の判明した江戸末期頃の関係者の調査を通じて、江戸初期の資料の発掘に努めたい。 3,春藤家および下掛かり宝生家の役者について、享保頃までの演能記録を調査した。今年度で江戸における演能記録はほぼ調査を終えた。来年度は江戸以外の演能記録を調査する予定である。 4,諸藩召し抱えや上方在住の春藤流や下掛かり宝生流の役者の実態を調査した。今年度に得た知見としては、まず江戸において幕府お抱え以外の役者が存在することを発見した。また、従来知られていた加賀・仙台・熊本・萩・高知以外に、尾張・紀州・水戸・富山・広島においても役者の存在したことが確かめられた。来年度は、それらの役者の事績を調査し、伝書類の発掘に努めると共に、なお諸藩における役者の解明に努めたい。 5,竹本幹夫氏によって、早稲田大学演劇博物館に春藤関係の謡本が存在することが発表された(平成8年12月芸能史研究会東京例会)。来年度、竹本氏に協力を要請して当該謡本の調査を行う予定である。
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