本研究最終年度に当たる本年度は、平成8年度に作成した創作文体論の「チェック・リスト」に基いて平成9年度に考案したアクティヴィティをさらに多様化させ、それを教育の現場で実践することに多くの時間が費やされた。個々のアクティヴィティについては、日本の学生がいきなり創作の手順に入るのがきわめて困難であるという、前年度に判明した問題点に留意し、まずテクストを形成している諸要素ーー音、書記素、形態素、語彙、統語法、結束性、比喩、話法、時制、テクスト間相互関連性ーーに注意を向けさせるような練習問題を作成して、授業中に行わせたところ、これはおおむね好評であり、学習効果も認められた。実際の創作については、チェック・リストに合わせて自分の創作過程をイメージさせるに留め、具体的な作品を書かせるまでにはいたらなかった。創作の指導、さらに高校、中学の英語教育への応用については、今後とも研究を重ねていく予定である。今年度の研究成果については、4月17日のJACETのセミナーで発表する予定である。また、本研究を進めるに当たって日本の英学史を参照していたところ、過去の日本においてかなり高度な英語力をもって発信型の創作を行っていた「英語達人」の存在が明らかになった。いままでの教育の改善を模索するより、むしろ成功者に学ぶという発想から、それらの人物の英語学習についてもかなり綿密な調査研究を行った。
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