研究概要 |
本論はC.S.パースの、意味とは記号システムのトランスレーション〈置換・翻訳〉から現われる、という仮説と、記号・表象項-対象-解釈項の三極関係によるセミオーシス(記号現象)の無限進行という発想に基づき、解釈・翻訳のプロセスとそのプロセスの生産メカニズムを一体に分析する。その分析は以下の仮定にも基づいている--1.言語記号は知覚対象を置換・翻訳した精神イメージのシンボル記号への置換・翻訳という二重のモデリングを受け、ここから字義的かつ隠喩的という二重の性質をもっている、2.セミオーシスは知識・情報の獲得・処理・伝達・継承・蓄積のプロセスであり、そこではつに解釈と置換・翻訳が一体となって実行され、3.この行為は言語内の置換・翻訳から言語間の置換・翻訳のレベルへと進行する。 第1、第2章はセミオーシスの本質である解釈=置換・翻訳を分析し、第3章はその現象の適切に説明する理論的モデルを公式化する。分析とモデル作りはすでに利用できる。適切な操作技術あると見なしたアプローチを用いてなされる。まず、字義と隠喩の二重性質をもつ言語記号で構成される表象システムとしてのテクストの整合性のある解釈・翻訳プロセスを実例を用いて分析する。次に、現実の辞書システムと百科事典システムを考慮に入れながら、そのプロセスの背後にある個人の精神内に内在している辞書・百科事典システムを理論的に推理し、テクストの解釈=置換・翻訳を実行する際の両システムの相互作用の基底メカニズムを記述する。最後に、集合の概念を応用して、辞書・百科事典的知識と知識・概念フレームワークを図式し,辞書システム【double arrow】百科事典システムのシフトを可動させる、前者のマキシマルな要素と後者のミニマルな要素をミニマル・エンサイクロペディア・システムとして提示する。こうして、表象システムの解釈=置換・翻訳のメカニズムを具体化させるミニマル・エンサイクロペディアを記号論的に解明している。
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