1998年に出版した拙著『英詩の文体論批評-イェイツとラーキンを中心に』ではとりあげられなかったラーキンの作品の中から主要なものを選び、それぞれに関して、書簡集や伝記などから、作品が書かれるに至った外部的背景を調べた。その後、ラーキン資料館所蔵の手書き草書を詳細に調査し、初稿から最終稿にみられる単語や韻、詩型を分析していくことによって彼の詩の特質、文体、詩作過程の秘密の一端を明らかにしようと試みてきた。この研究の一端は前年度報告したように拙著や研究論文「ラーキン的二重性」で発表したが、それ以降の研究は、作品の外部的研究と内部的分析を慎重に統合しながら、近い将来発表するつもりである。一方イェイツ研究もラーキン研究と並行して進めてきた。欧米においても、彼の文体とりわけ韻の研究は充分にやられていないことに注目して、この方面からイェイツの文体に迫っていきたいと考え、主要な作品の韻の分析にとりかかっている。韻と詩の内容との関係は非常に微妙で難しい問題であるが、イェイツに関しては他の詩人に比べ、興味深い結果がでる可能性が高いように思われる。この研究は早急に結論がでるような性質のものではないのでもう少し時間をかけて慎重にやっていきたい。なおイェイツに関しては学生向けの英詩のガイドブックの一章となる原稿をこれまでの研究をふまえて書き始めている。
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