平成8年度は、モダニズムとその基盤となっている他のヨーロッパの文化・思想との関連を探るために、主として、「ヨーロッパの文化・思想」及び「近代絵画の手法の研究」に関する文献の収集と研究を行った。 1. ヨーロッパの文化・思想について 次の3分野について、収集及び研究を行った。 (1)哲学-特に芸術の分野に影響を与えた、ニーチェ、ベルグソンの思想の関するもの。 (2)文化-アヴァン・ギャルド、デカダンスについて。 (3)文学-T.S.エリオット、ジョセフ・コンラッド、ジェイムズ・ジョイス、マル-セル・プル-ストといったアメリカモダニストたちに影響を与えたと思われるイギリスやフランスの作家たちの語りの手法の研究。 各ジャンルの詳しい理論付けや論証は次年度の課題であるが、本年度で収集された文献や資料を散見した所、当初の仮説通り、19世紀後半から20世紀初頭にかけて、思想家、芸術家たちはジャンルを超えて、理論的には極めて類似した疑問と思想を抱き、前の時代のリアリズム的対象認識法や描写法に不満をもち、新しい手法を産み出そうとしていると推定できる。 2. 近代絵画の手法について モダニズム運動と絵画との関連がこの研究の大きな課題であるが、特に印象派、キュービズム、エクスプレッショニズムとの関連が重要と思われた。中でもキュービズムは多角的視点の導入、対象の分析・分解、異質なもの同士の併置や融合という手法を持っているので、特に注目して研究を進めた。 研究の独創性のため文献が乏しいが、主として米国国会図書館、米国大英博物館図書館、国立国会図書館を通じて行なった。膨大な資料の収集、整理のためや、貴重な海外の資料にアクセスするためにコンピューターを活用した。また、国内外の研究者との意見交換しつつ研究を進めていった。
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