本年は当該研究の一年目に当たり、文献の購入・収集や資料の収集・分類・整理が主な作業となった。 変質論は19世紀の文化史研究の中でも近年非常に注目されているテーマであり、現在良書が続々と刊行中であるので、それらを積極的に収集し、読み、整理している所である。またE.M.フォースターのテクストをタクシノミアの観点から読み解く作業を進めているが、それに関連して19世紀の博物学史、とりわけダ-ウィン進化論と種の分類をめぐる議論について研究している。 資料については、今年度は海外研修を予定していなかったので国内で入手できるものに限って精力的に収集した。また未整理のままであった資料を、アルバイトを使って整理・分類し、必要なものについては読み込む作業を行っている。 本研究は変質論、母権論の思想と漱石文学との影響関係についても視野に入れ、とりわけ、これまで言われることのなかった母権論の影響を跡づけることを目指しているが、今年度、東北大学が所蔵する漱石文庫を閲覧、研究して、非常に有意義な結果を得ることができた。また漱石文庫の書籍自体、当該研究と同時代のものであり、本研究が対象とする時代と地域を源泉として知的フレームワークを形成していた作家の蔵書は第一級の資料であることが漱石文庫を閲覧して痛感された。今年度はそれらのデータをコンピューターに入力したが、今後はコンピューターとマイクロ・フィルムの二段構えで資料を収集・整理したいと考えている。
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