今年度も、昨年度からに引き続き文献・資料の収集に努めた。今年度はとりわけ、変質論関係の質の高い研究書が入手でき新たな知見を得ることができ、大変有意義であった.変質論を文化論・文化史の中で論じ、検討してゆくという、本研究の目指す所が、欧未の最先端の研究動向とも合致していることが確認でき、その点でも意義深かった。現在、このジャンルの欧未の研究書の発刊は目ざましいものがあるので引き続き収集、読破に努めたい。 現在の所、この変質論の脈絡の中で詰られていた同性愛の問題を、性差という差異の発信装置に還元して、変質論が病理という差異をつくる機構として機能していたことを明らかにするために、E.M.フォースターのマインドへの道の手がかりとした論文を執筆中である。 これまでの研究によって得られた、変質論や精神病理学を取り巻く世紀転換期の知のからくりを、ストーカーの『ドラキュラ』、ワイルドの『ドリアン・グレイの肖像』なども手がかりにして論文としてまとめてゆく予定である。またその同じ知の枠組の中にいたものとしての夏目漱石像をまとめてゆくことも次年度以降の課題である。
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