研究課題/領域番号 |
08610490
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
牧野 有通 明治大学, 文学部, 教授 (20092471)
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研究分担者 |
上岡 伸雄 明治大学, 文学部, 助教授 (50177573)
林 義勝 明治大学, 文学部, 教授 (10164972)
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キーワード | アメリカン・イデオロギー / ヴァーチュアル.リアリティ / 冷戦 / 門戸開放 / マッカーシズム / ハイテク武力 |
研究概要 |
1998年度においては、研究代表者(牧野)の研究単著(『世界を覆う白い幻影-メルヴィルとアメリカ・アイディオロジー』)に続く直接的研究実績として、二人の研究分担者の著書が出版されている。一つは林義勝の「日米関係論」の収録された共著、阿部斉、五十嵐武士編の『アメリカ研究案内』 (東京大学出版会、1998・6)であり、これは、日米関係の破局としての太平洋戦争にいたるまでの歴史的経緯を究明した日米の研究を、外交や経済にわたって総合的に検証したものである。また上岡伸雄の研究単著、『ヴァーチュアル・フィクション』 (国書刊行会、1998・5)は、マルチ・メディア時代のアメリカ文学を、とくにT.ピンチョンの『ヴァインランド』等に見られるような、冷戦期におけるアメリカ国内の病める状況、またファシズム的国内統制、さらには湾岸戦争にいたるハイテク武力優先主義の文脈で分析した研究である。 1998年度はまた、2000年の共著の出版を目指して、多数の研究書を購入し、その分析に時間を消費した。また研究討論会を重ねてきたが、その中で少しずつ集約されてきたものは、アメリカ国内における「ナショナリズム」というものが、戦争遂行力として非常に重要である、ということであった。とくに「国益」というものが関わるとき、国民を納得させる戦争正当化のレトリックとして、たとえば、「マニフェスト・デスティニー」の変形と言える「門戸開放」論、国内の異論を封殺する「魔女狩り」の変形とも言える「マッカーシズム」、ハイテク・メディアを稼働させて「ヴァーチュアル・リアリティ」によって戦争の悲惨を逸らそうとする論理を構成する事になるが、実はそれらこそが、アメリカ型「アイディオロジー」の主要構造をなしているのではないかと思われるのであり、今後もこの視角を維持しながら研究を続けてゆく予定である。
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