本年度はまず、統括にかかる予備的作業として、ランボーの1世代前の詩人ボードレールにおける〈地獄〉(とりわけその<超越的なるものの不在>と<救いの不在の認識による救い>)を考察し、その結果を日本キリスト教文学会全国大会(5月29日四国学院大学)において発表した。 同時に、20世紀フランス詩においておなじく<超越的なるものの不在>に身をおきつつ、しかしボードレールよりはるかに寡黙ななかたちでいわば現実における<救い>の可能性を探っているフィリップ・ジャコテという詩人の考察も、行った。 ボードレールとジャコテという2人の詩人の詩作と詩想(それは20世紀にあっては必然的に思索であり思想である)を核とし、そこに昨年度考察したモーリヤックのカトリック的世界、およびアルベール・ド・マンの社会実践的思考の世界、また、テイヤール・ド・シャルダンの夢想的思考世界等を加えたところに現出する歴史環境に、ランボーの思考を位置付けし直すことで、本年の最終目的である計画全体の統括を行う予定であったが、そこまで至ることはできなかった。この最後の作業は、平成11年度末までに完成させる所存である。
|