研究概要 |
1.研究目的 先の奨励研究において既にコーパスとしてMS-DOSテキスト化しておいた中世シャンパーニュ地方の主に土地贈与や売買に関する古文書資料の綴り字をチェックした.先の研究では主として広域的な方言特徴,すなわち広い領域に分布すると思われる音声特徴を分析したにとどまり,局地的で個々の文書に特徴的な特徴を扱うことができなかった。今回はそうした局地的な方言の綴り字の分析とその解釈を目指した. 2.経緯 局地的で個別的な綴り字を綿密に分析しようと考え,予備的な調査として,コーパスに現れる全単語の形態的変異の一覧とその頻度を調べた.これらは科学研究費の最終年度に公刊する予定である.その結果,狭い地域だけに見られる綴り字の特徴ではないかと考えられる単語が見つかった.しかし動詞の語尾や名詞の接尾辞における変異に関しては,その種類も多く,頻度も高いため,いきおい分類も複雑化すると思われ,今年度は十分に調査できなかった. 3.成果 (1)本コーパスの文書は明らかにラテン語の公文書の様式を土台としているが,実際にラテン語文書と中世シャンパーニュ文書の連関性とはどのようであり,後者の特殊性とは何なのかを考え,これを論文にまとめた. (2)貨幣単位と土地単位を表す語の地理的分布が,当時の国王とシャンパーニュ伯の勢力地域と関連していることを実証的に研究し,これを発表した.
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