平成8年度に行った主要な作業として、「カリカチュール」紙に掲載された石版画をポジ・フィルムに収めたあと、それらを画像入力装置を使って、デジタル画像に変換したことが挙げられる。この基礎的な資料体を作る過程において、各リトグラフに通し番号を与える必要が生じた。リトグラフにはすでに通し番号が付されているのだが、それは番号が重複していたり、欠番があったり、また作品を解説する記事に打たれている番号とも一致しないことがしばしばあった。この点は新聞ということでかなり杜撰なナンバリングがされていたと推測される。我々はそこでオリジナルの番号を可能な限り尊重しつつ、合理的な通し番号をつける作業を行っている。 また、作品に付されたキャプション、あるいは作品内に現れてくる文字(人物が持っている新聞、文書など)を資料ととしてまとめつつある。これらの文字情報はきわめて判読しにくいものであるが、作品の諷刺が持つ射程を計るのに非常に重要である。これら諷刺が持つ意味については平成9年度の研究で行う予定である。現在の段階で言えることは、「カリカチュール」紙が、発刊されてすぐに政府の言動を当てこする諷刺画を掲載し始めたのではなく、初期は諷刺とも言えない風俗的な意味あいしかない作品も数多く載せていた点が興味深い。また、「カリカチュール」紙と平行して当時の資料から得られた事実を突き合わせてみると、「カリカチュール」が石版画によって国民の知らない事実を暴露しそれを当てこすっているのではなく、ほとんどが政府、国王ルイ・フィリップに関する紋切り型を利用しているだけであることが分かる。 しかしこの点については、平成9年度に行われる体系的な研究を待たねばならない。
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