フランス西部ホロワティエ地方の伝承・メリュジ-ヌ神話が日本のトヨタアヒメ説話他につらなっているという指摘があり、文学でも「メリュジ-ヌ」のタイトルを冠する作品が19〜20世紀に数多く見られる。それらを分類整理し、昔話などの説話学に新らしい分類項目を提唱するとともに、近代文学のモチーフとして、「メリュジ-ヌ」モチーフをたてることができるかどうか作品の分析をとおして考える。 まず、19世紀初頭、ネルグァルのばあいを検討する。従来、その「オ-レリア」はオルペウス神話の文脈で読まれていたが、これをメリュジ-ヌ神話の翻訳として読む。 19世紀後半ではシャン・カランに「メリュジ-ヌ」がある、がこれは中世説話の「見知らぬ詩」を混入させている。メリュジ-ヌ伝承における異種モチーフの混入の例である。 20世紀初頭ではフランツ・エレンスの「メリュジ-ヌ」が注目される。聖杯伝説との接続が指摘できる。 その後はアンドレ・ブルトンの「移法17番」がイシス信仰のイメージとメリュジ-ヌを接続させている。 20世紀後半ではミッシェル・ダールの「メリュジ-ヌ」がある。これは十字軍時代の地方時士階級の生活を根底に据えている。 以上の作品の検討を行った。
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