18世紀フランスの知の集大成である『百科全書』巻頭を飾る「人間知識の体系詳述」が紡ぎ出すテーマ系のうちで、「理性」の二つの機能である「批判的侵犯」と「異界踏査」を中心的に取り上げるのが本研究である。 第2年目の本年度は前年度の成果を踏まえ、「批判的侵犯」のテーマを2つの側面から追求した。1:日常への侵犯では、18世紀フランス社会で日々の暮らしを構成する諸要素(住居、生活習慣、公私の観念、種々の仕草など)に兆す微妙な変化を、理性による日常への侵犯という形で捉え、2:裏面の暗黒では、整備されつつあるブルジョワ的な市民社会の秩序の裏側に隠れた、抑圧と隠蔽の対象となる人間の暗黒面を1)情念の復権、2)娼婦への関心、3)悲惨と貧困、4)犯罪と刑罰という4つのカテゴリーについて問題にした。 同時代資料(古版本、図鑑のオリジナル、マイクロ資料)に当たり、文字と図版の両側面から、マルチメディアの方法も活用しつつ研究を進めてきたが、その成果の一端は慶應義塾大学における平成10年度の授業教材として活用する予定である。
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