本研究は、欧州統合へのプロセスのなかで、いかなる外国語教育がEU(欧州連合)レベルで要請されているかについて、「リングァ計画」に焦点をあて、そのなかでも、とくにドイツ語教育をひとつの事例として、その内容を出来る限り具体的かつ実証的に明らかにしようと試みるものであり、本年度から3か年計画で行われるものである。 大学生、大学教員の間のEUレベルでの交流を促進する「エラスムス計画」については、わが国の大学関係者の間にもその名前はかなり浸透し、これを紹介する論文は相当の数にのぼっている。しかし「エラスムス計画」など一連の教育関連計画を推進するための基礎となる外国語能力の育成を目的とした「リングァ計画」に関しては、部分的にこれを紹介した記事は散見されるが、その全体について詳細に明らかにした邦語文献はほとんどないように思われる。 以上のような現状に鑑み、第1年目にあたる本年度は、まず「リングァ計画」に関する基本的資料の収集につとめた。その際、とくにボンにあるEU委員会のドイツ事務所、文部大臣会議事務局等において、同計画を含むEUの教育計画および教育政策全般に関わる基本的資料を多数入手することができた。またインターネットを使用して最新の動向の把握にもつとめた。 目下、これらの手段を通して入手した各種資料を項目ごとに分類整理し、それらに簡単なコメントを施す作業を行っている。またドイツにおける「リングァ計画」の実施状況に関する連邦議会の文書の翻訳(抜粋)を、研究協力者の助力を得て行った。これらについては、最終報告書のなかに所収する予定である。
|