1992年2月、EU12か国は、マーストリヒト条約に調印した。しかし、「国境なきひとつのヨーロッパ」が実現するためには、解決しなければならない問題が山積している。そのなかで自国語以外のEU諸国の言語を少なくともひとつ学習することは、問題解決のために重要な意味をもっている。行動計画「リングァ」は、EU加盟国によって、統一ヨーロッパの達成という目的のために、外国語教育の改革と拡大を図ることを目指して開発されたものである。 1995年に、「ソクラテス」と「レオナルド」という名称の計画が策定された。新しい「リングァ」計画は、この2つの計画を発展させたものであり、次の5つの目的をもっている。 A. ヨーロッパ協力プログラムのなかでの外国語教員の養成 B. 職業教育の教員の養成 C. 外国語教員助手の外国における1年以内のショートステイ D. 外国語教育に関わるカリキュラム開発 E. 学生および訓練生の交流 本稿では、上に挙げたDとEを中心に論及したが、リングァ計画についてより詳しく解明することは、わが国が抱える外国語教育の問題点の解決にとって、次の2つの点で、非常に有意義であるように思われる。 第一に、EU加盟国の間で、さらには広くヨーロッパにおいて、国境を越えて組織化され、実施される「パートナープロジェクト」について、幅広い合意が得られているという点である。 第二に、この計画では、最終的な成果に至るプロセスを、それが失敗であれ、成功であれ、明らかにし、出版することにより、関心をもった人たちに広く公開されているという点である。その結果、同じ誤りが防止され、「転移」(dissemination)が可能となる。 ヨーロッパにおけるこうした試みを、わが国におけるドイツ語教育にどう応用するかが今後のわれわれの課題である。
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