現代南アフリカ文学の生成と発展に関する研究として、本年度は主として南アフリカの作家ベッシー・ヘッドに焦点をしぼり、南アフリカ文学発展の経緯をたどってみた。ヘッドに焦点をあてることで、現代南アフリカ文学と作家が直面している問題点がより明らかになった。1998年6月にボツワナ大学で開催された第二回ベッシー・ヘッド国際会議で、日本におけるベッシー・ヘッド研究の現状を報告し、ヘッド研究者と意見交換ができたことは、研究上たいへん有意義であった。さらに、南アフリカ、ボツワナでのベッシー・ヘッドに関する研究資料を集めることができたが、まだ十分であるとはいえないので、今後もひきつづき研究を続ける予定である。 最終的には、1999年2月に著書『ベッシー・ヘッド 拒絶と受容の文学--アパルトヘイトを生きた女たち』(第三書館)を刊行することができた。本著書は、日本では最初のアフリカ人作家に関する本格的な評伝となり、今後のアフリカ文学研究に貴重な資料となると確信している。本研究では英語で書く作家を中心に研究することができた。今後このような形で、他の作家についても研究を行なっていく予定である。 南アフリカの文学をとりまく状況は、教育、言語、メディアなどと複雑にさまざまな問題が絡み合っていることが研究の過程でより明らかになった。したがって、ベッシー・ヘッド文学を通じて、アフリカ人やカラードのアイデンティティや民族意識の形成をたどることで、南アフリカのように多人種・多文化社会が抱えている問題点を多少とも明らかにすることができた。 さらに、1999年3月11日-14日までモロッコのフェズで開催されたアフリカ文学会(本部アメリカ)で、「ベッシー・ヘッドに関する評伝について」を発表した。
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