京都在住のタンザニア人でハヤ族のヘリ-・ルンクラティーレ氏をインフォーマントにハヤ語の調査を京都で行なった。 ハヤ語はタンザニア北西部、ルワンダとビクトリア湖に囲まれた地方に話されているバンツー系の1言語で、ブコバ市を中心に約120万人の話し手がいる。大言語の少ないタンザニアでは、大きい方である。 調査は、比較の上から、かつてザイールで調査した折りに作成したフンデ語の語彙集を調査票を用い(見出し語は約1200)、語彙を中心に調べ、これで語彙調査はほぼ完了した。しかし、あと確認作業と録音、そして時制による動詞の変化など文法項目の調査が残っている。 バンツー系諸語の調査で特に難しいのは、声調(ピッチ)の聞き分けと、その分析である。フンデ語では、例えば4音節語では、1)低.低.低.低、2)低.低.高.低、3)低.低.下降.低の3つのパターンがあるが、1)と2)、そして2)と3)のパターンの音声的区別は、かなり微妙である。例えば1)は、実際には低.低.低.超低のように発音され、2)の低.低.高.低のパターンと紛らわしい。また2)と3)のパターンの区別も場合によってはほんのわずかである。 しかしながら、例えば、あとに「私の」という形容詞をつければ、2)は低.低.低.高、そして3)は低.低.高.低となり容易に区別できる。従って分析は、如何にこういった「枠」を見つけるかということにもかかっている。
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