京都大学に留学中のヘリ-・ルンクラティーレ氏(1960年生れ、男性)をインフォーマントに、主としてタンザニア北西部に話されるハヤ語(Haya)の調査を行なった。ハヤ語はタンザニア北西部、ルワンダとビクトリア湖に囲まれた地方に話されているバンツー系の1言語で、ブコバ市を中心に約120万人の話し手がいる。大言語の少ないタンザニアでは、大きい方である。 「頭」「目」から始まる語彙調査から開始し、音韻、文法の諸項目をカバーした。結果、約3000語からなる、発音と文法項目を含む語彙集を完成させ、さらに発音をDATに録音し、コンピュータによる音声分析を可能にした。これらの成果は平成10年度に報告者が行う「フィールド・メソッドによるハヤ語の言語研修」に活かされる予定である。 バンツー系諸語の調査で特に難しいのは、声調(ピッチ)の聞き分けと、その分析である。ハヤ語では、例えば4音節名詞では、1)低.低.低.低、2)低.低.高.低、3)低.低.下降.低の3つのパターンがあるが(いずれも、終わりの2音節が語幹)、1)と2)、そして2)と3)のパターンの音声的区別は、かなり微妙である。例えば1)は、実際には低.低.低.超低のように発音され、2)の低.低.高.低のパターンと紛らわしい。また2)と3)のパターンの区別も、場合によってはほんのわずかである。 しかしながら、例えば、名詞のあとに「私の」という形容詞をつければ、2)は低.低.低.高、そして3)は低.低.高.低となり容易に区別できる。従って分析では、いかにこういった「枠」を見つけるかということにもかかっている。
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