本研究は、東京大学名誉教授柴田武が1970年から1975年までの6年間に宮古島平良市で調査して得られた宮古平良方言資料に記載された方言語彙をパソコンに入力し、つぎのように整理した。 (1) 総語数1万1千のうち、重複を整理し、6千5百に確定した単語について、前年度にひきつづき、カタカナ表記を追加する作業をおこなった。これは地元の方言話者が詠みやすくなるようにしたものである。 (2) その方言語彙を録音資料の音質、および保存性にすぐれているミニディスクを使用して録音した。録音は話者の自宅でおこなった。録音は扇風機やクーラーの音などの騒音を考慮して部屋を閉め切っても大丈夫なように、気候が涼しくなってからおこなった。話者の健康状態などの影響で作業はあまり進行しなかったので、のこされた研究期間内に作業を完了させるために、複数の話者で録音作業をおこなうこととし、沖縄本島に最近移住してきた宮古島出身者に依頼した。沖縄本島の話者のばあい、録音作業を定期的に、しかも話者の負担を少なくすることが可能である。方言話者と「柴田ノート」の情報提供者の年齢差のためか、あるいは個人差のためか、今回の話者にとって発音しずらい単語が若干あった。 (3) 録音された音声をもとに宮古方言の音声の詳細な分析をおこない、類似の音韻体系をもった、おなじ南琉球方言に属する八重山方言との比較研究のために、八重山諸島の小浜島の方言の臨地調査をおこなった。
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