1.研究目的 北方ユーラシアの諸言語の「言語的な事実」と「19世紀の言語改革問題=近代言語学史」の二点を同時に対照・考察し、諸民族の近代を探る。 2.初年度(平成8年度)に得られた新たな知見と研究展開・研究継続事項 (1)トルコ語圏をも視野に入れつつ、19世紀を中心とする言語連合地域を設定した:ハプスブルク=ドナウ河、ロシア=ユーラシア(シベリア〜ヴォルガ河〜黒海〜コーカサス)、中国北方=モンゴル高原(特に東モンゴル)・満州地域。 (2)全地域にわたる概説として『村山七郎先生とその時代』をまとめ印刷した。5月出版の格理論から各言語特徴についての研究成果を修正し、9月にウクライナ共和国のオデッサ国立大学において講演した。昨年度来まとめていたハプスブルク・ロシアの言語改革問題を『ハンガリーの言語学者The Budapest School」として製本した。 (3)19世紀帝政ロシア刊のフィン・ハンガリー文法、19世紀のハンガリー語研究などをその前後100年くらいの範囲でまとめつつ、17世紀のチェコの教育学者コメニスウス資料をロシア語・薩摩語訳とも対照し、近代の言語観を考察している。ロシア連邦においてモンゴル語写本と19世紀の帝政ロシア刊のモンゴル文法とを複写入手し、ヨーロッパや帝政ロシア的な言語観について考察している。 (4)東モンゴルについて5月に『出口程記』(18世紀末)を更訂し、全体を概説し、同時に、満蒙文献の大枠をほぼまとめた。19世紀のドイツ青年文法学派的な20世紀アルタイ言語学の成果である野村正良モンゴル音韻論(東京帝国大学卒業論文、東京大学学位論文)について基礎的に分析している。
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