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1996 年度 実績報告書

古代地中海世界における神話伝承と自然観

研究課題

研究課題/領域番号 08610533
研究種目

基盤研究(C)

研究機関東京大学

研究代表者

水谷 智洋  東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (10011321)

研究分担者 秋山 学  東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助手 (80231843)
大貫 隆  東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (90138818)
キーワード自然 / 秘儀 / 神話 / 共同体 / 儀礼 / 無受苦 / 典礼 / 変容
研究概要

時代別に「1.古代ギリシア」「2.旧約時代のイスラエル」「3.古代ローマ」「4.新約時代のイスラエル」「5.ビザンツ時代」という大区分に分割し、各時代ごとに明らかになった「神話伝承と自然観」の全体像を記すことにしたい。まず「1.古代ギリシア」においては、ホメロスからアッティカ時代へと神話伝承が継承されてゆく過程で、ギリシア民族の自然に対する畏怖・驚嘆の念のうちに宗教的感覚が形成されてゆくことが、トロイア物語の分析(水谷)やギリシア悲劇の秘儀的研究(秋山)によって明白になった。また特にアリストテレスの『詩学』に関しては、「神話」(ミュートス)という語彙が「劇の筋」「物語」という意味だけでなく、さらにポリスに潜在する共同体的記憶を担う側面をも含むものであることが明らかとなった(秋山)。「2.旧約時代のイスラエル」に関連して、本グループではヘブライ語文法学との関連の下に研究を進めたが、ヘブライ文字の起源に供儀・儀礼的な実践的慣習が伏在していることが認識された(秋山)。次いで「3.古代ローマ」においては、古代ギリシアからの哲学的世界観が、ローマ時代に産声を上げたキリスト教へと遷移する過程で、ストア派哲学に見られる「アパテイア」(無受苦)の死生観の存在が浮かび上がってきた(秋山)。「4.新約時代のイスラエル」においては、神のひとり子であるイエス・キリストの人類史への受肉によって、神の救済意思が完遂を見たとするキリスト教神学の誕生を見るが、それは典礼の確立という側面を伴う際にギリシアの秘儀的伝統を受容する一方(秋山)、イエスは自然界におけるロゴスの具現者であるとするヨハネ神学を成立させた(大貫)。最後に「5.ビザンツ時代」にあっては、聖書あるいは古典ギリシア語文献の学的注釈作業のなかで、時代と風土を越えて働く父なる神の意思と聖霊の働きを黙想する「普遍的変容」の神学が時代的特徴として浮かび上がってきた(秋山)。

  • 研究成果

    (8件)

すべて その他

すべて 文献書誌 (8件)

  • [文献書誌] 水谷智洋: "翻訳 ディクテュス・クレーテーンシス『トロイア戦記』第五巻-ルキウス・セブティミウスのラテン訳より-" 東京大学大学院総合文化研究科『外国語研究紀要』. 第1号(未定). (1997)

  • [文献書誌] 秋山学: "キケロの老年論-『老境について』をめぐって-" エポス. 第16号. 133-142 (1996)

  • [文献書誌] 秋山学: "神話から神秘へ-アリストテレス『詩学』におけるmythosの再評価-" 東京大学大学院総合文化研究科『地域文化研究年報』(仮). 第1号(未定). (1997)

  • [文献書誌] 秋山学: "オレステスの「浄め」「学び」「神見」-エレウシスの秘儀と『エウメニデス』-" 東京大学大学院総合文化研究科『外国語研究紀要』. 第1号(未定). (1997)

  • [文献書誌] 大貫隆: "福音書と伝記文学" 岩波書店, 254 (1996)

  • [文献書誌] 大貫隆: "福音書のイエス・キリスト4 ヨハネによる福音書" 日本基督教団出版局, 308 (1996)

  • [文献書誌] 大貫隆: "地中海 終末論の誘惑<所収「古代黙示文学の終末論>" 東京大学出版会, 246<うち15> (1996)

  • [文献書誌] 秋山学: "地中海 終末論の誘惑<所収「ビザンティン思想における終末論>" 東京大学出版会, 246<うち15> (1996)

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公開日: 1999-03-08   更新日: 2016-04-21  

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