平成八年度研究計画にしたがって、研究代表者は国立東洋文庫や京大人文科学研究所などにおいて主に漢籍の文献調査を行い、それにより欧米の中国詩の受容についての研究を発展させ、一定の成果が得られたと考える。すでにこれまでに収集したイギリス・フランスにおける中国詩の翻訳関連の文献に基づき、ヨーロッパの文化人の極東文化への関心と理解を、時代性を重視して探ってきているが、より具体的には十九世紀フランスの半ば、初めて唐詩のフランス語訳を行なった、中国学者のエルベ・ド・サンドゥニの例や、テオフィル・ゴ-チェの愛娘のジュディット・ゴ-チェによる唐詩などの中国詩の翻訳を通じて考察した。彼らの、詩人や詩の選択を通じて、十九世紀におけるフランスのエキゾテイズムが奈辺にあるかを見いだした。と同時に、彼らのフランス語訳の詩から、オリジナルの詩を導き出し、出典の調査を行なった。 漢詩や中国語の疑問に対しては、尾崎雄二郎京大名誉教授から適切な御示唆を頂戴し、研究は順調に進んだ。また本年三月退官される、国際日本文化研究センター教授の芳賀徹氏からもこの研究テーマについてご支援を頂いている。 さらには、フランスの中国文学者からも研究代表者のテーマには関心が持たれ、本年の一月には、パリ東洋語研究所の中国学部門のカトリーヌ・デスプ教授に招かれて、公開講演を行なった。その際、有益な指摘も得られ、負重な機会が得られたと思う。 これらの成果は、裏面のように、いくつかの発表機関により公刊される。フランスにおいてもこの研究が成就された暁には、公刊することを勧められている。
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