平成9年度は、主に京都大学人文科学研究所附属東洋学文献センターで調査を行った。欧米における中国詩の受容とその翻訳の変遷に多大な影響を与えた十九世紀半ばのフランスのジュディット・ゴ-チェのLe Livre de Jade(『玉書』)に焦点を当てて調査研究を行ない、フランス語の訳詩の分析を始めとして、その翻訳詩がドイツやイギリス、アメリカなどに与えた影響関係などについても調査した。さらにはそれらの翻訳詩の原詩及び原詩人の究明も目指した。その研究成果の一部については本年始め、パリの東洋文化研究所において発表の機会もあり、フランスの中国文学関係者らと有益な討論の機会も得た。ゴ-チェのフランス語訳詩集のみならず、これまで知られていなかった中国人の曾仲鳴の唐詩のフランス語訳(『唐人絶句百首』)の分析もこの調査期間内に行い、クローデルの中国詩がこれらのフランス語訳に影響を受けた事実との関連からもこれを重視した。曾仲鳴の訳詩の出典が巷間言われているように『唐詩三百首』ではなく、清代の王士の『万首唐人絶句選』にあること、など一首、一首の分析から解明できた。なおこれらの研究成果は平成7年度、8年度の成果と合わせて、平成9年度文部省の出版助成金を得て出版される。
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