本研究の目的は、第1に実態調査を通じて日本の女性弁護士の実像を明らかにし、第2に、フェミニズム法理論およびプロフェッション論の観点から理論的検討を加え、実態と理論の統合を試みることにあった。 本研究は、女性弁護士研究の不在状況に一つの突破口を提供することを目的として行われたのであり、第1に、女性弁護士に対して行われる、本格的な社会学的手法を用いた初めての実態調査である。今回の科学研究費の範囲内においては、統計処理による大数調査を実施し、女性弁護士の全体像をつかむ努力がなされた。本年度は、昨年度末に実施に至ったこの実態調査のデータ処理、集計および分析を行った。 同時に、近時発展し続けている法学・社会学におけるフェミニズムの理論から、女性弁護士研究の枠組みの構築を試みた。この成果は1997年度日米法学会総会におけるシンポジウムにおいて、「フェミニズムによる法実践」として口頭報告されが、本年度は、この報告をもとに学術雑誌論文としてまとめた。本報告書第2章は、本年4月発行の『アメリカ法』(1998-2号)に掲載された論文である。 このような理論化は、国際比較に基づくクロスカルチュラルな分析の背景なしには行い得ないものである。本年度は、諸外国(主としてアメリカ)のフェミニズム法学ないし法理論の文献研究を深めることによって、女性弁護士の業務を分析するための枠組みを構築することができつつある。また、その枠組みを日本の女性弁護士の実態に照らして再検討することにより、女性弁護士の業務の問題点とその社会的要因を析出することを行っている。
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